編入生
私は頭がいいと思っていた。
性格も、自分から自然と出てくる優しさに気付いていたし、スポーツもできたから、その頃はなかなか人生がうまく行っていたのかもしれない。
今でも自分に自信を持つことや、他の人との違いを誇るような気持ちでいることもあるが、当時のままではない、
頭がいいと思ったのは、勉強ができたことと、周りの友達が話していることが瞬時に理解できたことなどからだ。
子供の頃は知らないことや意味の分からないことがたくさんあって、学校のところどころで疑問が生まれ、友達同士で質問し合っている。
横から聞いていて、それはこうだよと教えてあげたいが、引っ込み思案なために言えないということが数えきれない程あった。
状況によっては答えられるのに、わざとわからないフリをするということもあった。
そういう学生時代を送ったものだから、自分は頭がいいと思ってしまうのは当然だろう。
だが、それは単純に人より早く知識を身に付けたということに過ぎないのである。
それこそが知能だと言われればそれまでなのだが、大学生でそれで覆すことが起こった。
大学では編入といって、違う大学から二年生や三年生時から入学するシステムがある。
私のいた学科でもそれはあって、四人ほど入ってきた。
彼らは今でも大学で研究を続けていたり、仕事で大きな成果をあげているような人達だ。
彼らは少し大学としてのレベルが下と言われるようなところからの編入だから、どれだけの実力があるのか皆懐疑的だったと思う。
事実、はじめのころの授業ではわからないことが多く、まあそんなものだろうと私は思っていた。
しかし彼らはどんどん伸びた。
最終的には皆トップクラスの実力を身に付けた。
彼らは他の大学の選ばれし人間で、きちんと勉強すればどんどん成長していくような知能を持っているんだと驚かされた。