闇のキャンプ

友人が会社の人から聞いた話だが、究極にメンタルを鍛えるアウトドアがあるそうだ。
集団でキャンプに向かうが、一人一人車から降ろして、たった一人で一晩キャンプを張らせる訓練。
なんとこれを中学生が行うらしい。
ボーイスカウトのような集団の話かもしれないが、ずいぶんストイックな内容だと驚いた。

キャンプ場ではなく、個人でキャンプを張ることが許可されている山で、一人下ろしたら、車で10分くらい走ってまた次の一人を下ろす。
携帯電話が無い中で、たった一人で暗くなる前にテントを立てて食事の準備をしなければならない。

テントを立てるのも協力できないので、あらかじめしっかりと立て方を理解しておかなければならない。
料理だって、自分一人で作らなければならない。
なんといっても山の夜は恐ろしい。
暗い、のレベルが違う。

真っ暗闇の中でイノシシなどは出ないのだろうか、とかそんなことを頭によぎらないようにしながら朝をまつ。
私ならそもそも食欲が沸かないから夜ご飯を作らない。
テントの中でがたがたと震えて一晩を過ごすと思う。

夜もきっと眠れないだろう。
夏場は夜が短いと言っても、夜の8時くらいから朝の5時くらいは暗い。
およそ9時間から10時間、暗い中で過ごすのだ。
星が綺麗ね、とか空気が美味しいとか感情を分け合える人もいない。

話す相手がいないので、ちょっと風が吹いて枝が動いただけでも、なにか動物が出たのではないかと身構えて固まってしまうだろう。
そんな究極の鍛え方したくないね!という結論になったが、その究極のキャンプは翌年から開催されなかったらしい。
親としては、そこまでしなくて良いですというかんじで苦情を寄せたのでは無かろうか。

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